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ドキュメント内 アステラス製薬 | アニュアルレポート2017 (ページ 71-81)

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4つの分野で保健医療への アクセス改善に注力

SDGsの「目標3」について、アステラスは保健医療への アクセス向上の観点から取り組んでいます。アステラス は、適切な治療方法が存在しないことや貧困、保健システ ムの不備、情報不足が理由で必要な医療を受けることが 困難な状態を「保健医療へのアクセス(Access to Health)」課題ととらえ、①イノベーションの創出、②入手 可能性の向上、③保健システムの強化、④健康に対する知 識・理解の向上という4つの分野を特定し、自社がもつ強み や技術を活かして課題解決に取り組んでいます。また、そ の実施にあたっては、「目標17」にあるようにパートナー シップを最大限に活用しています。

イノベーションの創出においては、第一に、治療満足度 の低い疾患領域において革新的な医薬品と医療ソリュー ションを創出し、それを世界中の患者さんのもとに届けて いくことに取り組んでいます。また、アステラスは国立研究 開発法人産業技術総合研究所とシャーガス病の新規治療 薬の創出に向けて、東京大学医科学研究所とコレラや毒 素原性大腸菌などを対象とする経口コメ型ワクチン

「MucoRice-CTB(ムコライス)」について、それぞれ共同 研究を実施しています。さらに、住血吸虫症の治療薬プラ ジカンテルの小児用製剤開発にもパートナーとともに取り 組んでいます。

入手可能性の向上については、薬剤費負担が困難な患 者さんに対する支援プログラムを提供しているほか、大き な経済課題がある国においては特許を出願しないこと、特 許権の非行使などの対応で患者さんを支援しています。

保健システムの強化、健康に対する知識・理解の向上に 関しては、SDGsのターゲットの一つである「2030年まで に非感染性疾患による早期死亡件数を3分の1減少させ る」ことに貢献すべく、グローバルなイニシアティブである Access Acceleratedに参画しています。また、産科フィス チュラを対象としたAction on Fistulaを支援しています。

アステラスは、さまざまな事業活動を通じて、SDGs達成 への貢献を目指しています。そして、このSDGsへの取り組 みを通じて、社会からの期待に応えると同時に、自社の競 争力と企業価値を持続的に向上させていきます。

持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年に国連総会 で採択された2030年までに達成すべき世界共通の目標 です。

アステラスは「SDGsの企業行動指針(SDG Compass)」

を参考に、バリューチェーン全体を通じたSDGsに関する 正および負の影響を評価し、SDGsに関して優先的に取り 組むべき課題を特定しました。今後、さまざまな事業活動 を通じて、SDGsの中でも健康と福祉に関連する「目標3」

を中心に、達成に貢献していきます。

SDGsに対するアステラスの活動事例

SDGs テーマ アステラスの活動事例

目標3 健康と福祉 革新的な新薬や医療ソリューションの創出、熱帯病に対する治療薬・ワクチンの共同研究 目標5 ジェンダー平等 日本における女性の管理職比率の向上

目標6 水と衛生 水の使用量削減、排水の管理

目標8 働きがい 働きやすい職場環境の整備、従業員の研修・教育、労働安全衛生の確保 目標9 技術革新の基盤 ネットワーク型研究、イノベーションの創出

目標12 持続可能な消費と生産 環境に配慮した生産

目標13 気候変動 温室効果ガスの排出量低減

目標15 陸の豊かさ 生物多様性の維持・保全

目標17 パートナーシップ 公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)へのパートナーとしての参画

持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

医療アクセスの向上を目指す Access Acceleratedへの参画

抗寄生原虫創薬の共同研究

アステラスは、2017年1月より始動したAccess Acceleratedに参画しています。Access Accelerated は、低所得国や低中所得国における非感染性疾患の予防、

診断、治療へのアクセス向上を目的としたグローバルなイ ニシアティブです。世界で20以上の製薬企業が参画し、世 界銀行や国際対がん連合などのパートナーと連携してい ます。

非感染性疾患とは、感染性病原体を介して人から人へ伝 染しない疾患であり、代表的なものにがん、心臓血管病、慢 性呼吸器疾患、糖尿病および精神疾患などがあります。多 くは、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの 生活習慣の改善により予防が可能です。

非感染性疾患の患者数の増加は先進国に限ったことで はなく、途上国でも患者数が増加しています。

非感染性疾患の患者数の増加は、途上国の医療財政を 圧迫するだけでなく、病気で働けなくなる人の増加と経済 的な損失にもつながります。

Access Acceleratedにおいて企業は、途上国における 非感染性疾患の予防、診断、治療へのアクセス向上を目的 とする100以上のプログラムに長期的に投資していくほ か、実施しているプログラムのより効果的な進捗確認、効 果測定などの方法をボストン大学の協力を得て検討しま す。アステラスが支援しているAction on Fistulaも個別 企業によるプログラムの一つとして公式サイトで紹介さ

アステラスは、2016年4月より国立研究開発法人産業 技術総合研究所(産総研)と共同研究を実施しています。

共同研究の対象であるシャーガス病は、顧みられない熱 帯病(NTDs)*1の中でも特に新薬が求められている「トリ パノソーマ科寄生原虫症」の一種です。アステラスは 2012年から2016年3月期まで、5つの研究機関および国 際NPO*2との共同研究を実施し、トリパノソーマ科寄生原 虫症に対する治療薬の創出を目指してきました。この共同 研究で得られた知見を活用し、2016年からの産総研との 共同研究では対象をシャーガス病に絞り、ゲノム編集技術 を用いることで寄生原虫の生存に必須な遺伝子を短期間 で正確に見出せるかを検証しています。

アステラスの「保健医療へのアクセス(Access to Health)」課題解決のための、より具体的な取り組みを以 下に紹介します。

アステラスは、この取り組みを通じて培った各国の政府 や現地パートナーとの関係が、長期的に事業活動にも相 乗効果をもたらすと考えています。

Access to Health

れています。また、参画企業全体で世界銀行グループと連 携し、アフリカなどにおいて国家レベルの保健課題解決に 取り組みます。さらに、国際対がん連合と連携し、世界のが ん患者さんの生存率を向上させることを目的に、途上国の 都市におけるがん治療の質の向上を支援します。

* Access Acceleratedのウェブサイト http://www.accessaccelerated.org/

*1 顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases:NTDs):発展 途上国の熱帯地域、貧困層を中心に蔓延している寄生虫、細菌感染症 で、世界で10億人以上が感染していると言われています。

*2 東京大学、東京工業大学、長崎大学、高エネルギー加速器研究機構、産 総研および国際非営利組織(DNDi:Drugs for Neglected Diseases initiative)と共同研究を実施してきました。

アステラスは2016年6月より、東京大学医科学研究所 とコレラ、毒素原性大腸菌を対象とする経口コメ型ワクチン

「MucoRice-CTB(ムコライス)」に関する共同研究を実施 しています。

発展途上国ではコレラや毒素原性大腸菌などの起炎菌 が引き起こす下痢症が乳幼児の大きな死亡原因となって います。しかし、既存のコレラワクチンは低温で保管、輸送 する必要があるほか、毒素原性大腸菌には効果が期待で きないなどの点で課題があります。ムコライスは、室温で 品質を安定的に保ち、簡便に製造できることから、既存の コレラワクチンで満たされない医療ニーズを充足すること が期待されます。

コレラと毒素原性大腸菌を対象に実施を予定している ムコライスの第Ⅰ相および第Ⅱ相臨床試験において、東京 大学医科学研究所は必要な治験薬や試験データなどを提 供し、アステラスは当該臨床開発を担当します。

2017年5月には、共同研究の対象範囲をノロウイルス などが引き起こすウイルス性腸管下痢症にも拡大する契 約を両者間で締結しました。

また、アステラスは、この共同研究を通じて、革新的な新 薬開発に向けた新たな創薬技術基盤の開発へ挑戦し、未 だ満たされていない医療ニーズに応えていきます。

住血吸虫症はアフリカや南米を中心とする発展途上国 に多い寄生虫感染症で、特に小児の罹患率が高い疾患で す。標準的治療薬であるプラジカンテル錠は、錠剤の大き さに起因する窒息リスクや薬剤の苦みなど、乳幼児を含む 就学前児童には服薬が難しいという課題があります。

アステラスは、他の製薬企業や研究機関、国際非営利組 織とともにコンソーシアムを設立し、プラジカンテル錠の 小児用製剤を開発しています。

小児用製剤の創製にあたりアステラスは、独自の製剤技 術を供与しました。本剤は、現行錠より小型かつ口腔内で 崩壊して水の有無に関わらず服用できるように設計されて おり、苦みを低減する工夫も施されています。また、生産コ ストを抑えつつ、簡素な生産技術で製造でき、熱帯地域の 高温多湿な環境でも安定性のある錠剤です。小児用製剤 開発の技術やノウハウはブラジルおよびドイツの製造委 託先に移転し、治験薬の製造と委託先の現地生産能力の 構築にも貢献しました。

コンソーシアムでは現在、第Ⅱ相臨床試験を実施してい ます。第Ⅲ相臨床試験に向け、2016年12月にはグローバ ルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から3度目となる資 金提供を受けています。アステラスは本コンソーシアムに 対し引き続きノウハウや技術を提供していきます。

経口コメ型ワクチンの共同研究

住血吸虫症に対する小児用製剤の開発

新しく開発された小児用製剤(上)と既存の製剤(下)

プラジカンテル小児用製剤開発に関わるコンソーシアムメンバー

©Lygature 2016

ドキュメント内 アステラス製薬 | アニュアルレポート2017 (ページ 71-81)

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